通帳を見てから、
その場で問い詰めることはしなかった。
感情的になっても、
何も進まない気がしたからだ。
「仕事から帰ったら、ちゃんと話そう」
そう約束した。
その時、
一つだけ、はっきり伝えたことがある。
「その人には、連絡しないでほしい」
今はまだ、
何も確定していない。
でも、
口裏を合わせられるのだけは、
どうしても避けたかった。
夜、
電話するかもしれない。
その可能性も含めて、
話をするつもりだった。
仕事中ずっと、
心は上の空だった。
早く帰りたかった。
パソコンの画面を見ていても、
頭の中に浮かぶのは、
あの名前ばかり。
「今ごろ、連絡しているんじゃないか」
「もう口合わせをしているんじゃないか」
考えないようにしようとするほど、
その想像は、
何度も頭に戻ってきた。
信じたい気持ちは、
確かにあった。
でも、
それ以上に強かったのは、
嫌な予感だった。
何もしていなければ、
連絡する必要はない。
それなのに、
なぜか胸がざわついて仕方がなかった。
その不安は、
結果的に、
外れてはいなかった。
あとから知ることになるが、
その間にも、
メッセージのやり取りは続いていた。
仕事が終わる頃には、
覚悟はほぼ決まっていた。
話を聞いて、
それでも納得できなければ、
自分で確かめる。
この時点で、
もう僕は、
真実から目を背けないと決めていた。

コメント