結婚してから、
僕の生活の中心は、ほぼすべて「家族」だった。
仕事が終われば、寄り道はしないで直行直帰。
家族に早く会いたかった。
それが当たり前と思っていた。
家に帰れば、
子どもたちの寝かしつけは一緒にやって、夕飯を温めてたべる。
皿洗いをして風呂にはいる。
妻はそのまま子ども達と就寝する。
朝はみんなの食事を準備し、お弁当を用意して会社へ行く。
休みの日は、3食自分の担当。
特別な料理じゃない。
それでも「父親として家にいる」ことを大切にしていた。
「僕はちゃんとやっている」
そう思いたかったわけじゃない。
ただ、
後ろめたさだけは残したくなかった。
妻が外で働かなくていいように。
子どもたちが困らないように。
家の空気が荒れないように。
そのために、
自分が出来ることは、全部やってきたつもりだった。
少なくとも、
「家のことを何もしていなかった夫」ではなかった。
それだけは、
胸を張って言える。
だからこそ――
後になって知ることになる現実が、
あまりにも理解できなかった。
この時の僕はまだ、
自分の足元で、
静かに何かが壊れ始めていたことに気づいていない。

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