急いで家に帰った。
けれど、家の中はいつもと同じだった。
妻の顔も、子どもたちの声も、
何一つ変わらない。
それが、逆につらかった。
子どもたちが寝るまで、
僕の心はずっとざわざわしていた。
何かが起きている。
でも、まだ何も起きていない。
その宙ぶらりんな時間が、
一番しんどかった。
子どもたちが寝たあと、
妻がスマホを見て言った。
「今から電話していいか、連絡するね」
しばらくして、
相手の男から返事が来た。
「22時だったら大丈夫」
その一文を見た瞬間、
僕は心の中で思った。
——なんで、こっちが時間を合わせなきゃいけないんだ。
それでも、妻はその時間に電話をかけた。
今思えば、
あの時間は、
あの男の家族が近くにいない時間だったんじゃないか。
そう考えると、
胸の奥が、冷たくなった。

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